人工関節置換術は高齢化にともないわが国でも、頻繁に行われる術式となっている。本来本術式は患者のQOL、ADLを高める効果を目的に行われるものであるが、人工関節置換術周囲感染は(PJI)はひとたび感染すると逆にその目的を損なう臨床医にとってもっとも忌むべき致命的合併症にもなりうる。とりわけ病態が個々に異なっており、大規模無作為試験になじまず、エビデンスを提示しにくい感染症であり、世界の臨床医にとっても喫緊の課題となっている。本書はそのために、世界80カ国からThe Rothman Insttute のJavad Parviziを中心にInternational Consensus on Periprosthetic Joint Infection が開催され、整形外科医のみならず、感染症専門医、リウマチ専門医、放射線科専門医、病理学、薬理学の一流の研究者が一堂に会し、長時間にわたり多くの論文を吟味して作成されたコンセンサスです。まさに「臨床医および患者にとって有益な最高の研究を統合したものであり」臨床医はもちろん、Infection Control Doctor や感染管理認定看護師の方々にとっても、座右の書であろう。特に感染の発症機序に止まらず、予防、診断、治療(抗菌薬の使い方にまで踏み込んだ)解説はそのまま実践に役立つ内容になっている。
序文/田中 栄・齋藤知行
- 監訳・編集・訳者一覧
第1章リスクの軽減と教育
第2章周術期の皮膚準備
第3章周術期抗菌薬投与
第4章手術環境
第5章血液保全
第6章人工挿入物の選択
第7章人工関節周囲感染の診断
第8章術後創管理
第9章スペーサー
第10章洗浄デブリドマン
第11章抗菌薬治療と再置換術のタイミング
第12章一期的再置換術 vs 二期的再置換術
第13章真菌性あるいは非定型的人工関節周囲感染の治療
第14章経口抗菌薬療法
第15章晩期人工関節周囲感染の予防
- “International Consensus Meeting on Periprosthetic Joint Infection”に参加して
- あとがき
- 索引