卓越した神経内科医であり、また臨床疫学、EBMの先駆者である著者が、臨床研修のためにその考え方を、神経内科診療の手引きとして示した秀作。複雑といわれる神経内科の診療を、本書ではまず確率、頻度、致命的か、治療可能かをまず頭においてアプローチすることの重要性を、具体的な疾患の診療の進め方として解説している。多岐にわたる知識を、現実の診療に適用できるようバッサリと研ぎ澄ました解説は、豊かな臨床経験と臨床教育の中で培われたものにしかできない。90分で読めるボリュームにもかかわらず研修医生活2年分に必要なエッセンスが集約されている。ローテーションの前後のまとめに最適な1冊である。
第1章 EBM的神経診断学の要点
- 診断の道すじ
- プロとしての合理的な診断法を身につける
- 可能性の高い診断と鑑別診断を挙げ、絞り込む
- 診断がつかないときは、チャンスを待てるときは待つ
- 神経学的診察
第2章 EMB的症状・疾患別診療エセンシャルズ
- 頭痛
- 初期対応の基本
- 問診:最も重要な武器
- 診察:簡易神経学的診察
- 診断と処
- 頭蓋内圧亢進の判定(眼底検査)
- 代表的な治療
- 失神
- 初期対応の基本
- 問診:病歴が重要!
- 大切な鑑別は心原性とてんかん
- 身体診察
- 検査
- 画像診断は役立つか?
- 治療:まず生活の注意から
- 意識障害診察時にも意識障害がある場合
- 初期対応の基本
- 手順と流れ
- 意識障害の基本事項
- めまい
- 初期対応の基本
- 問診:どのようなめまいか?
- 問診:進めかた
- 診察と検査
- マネジメント
- めまいの基本事項
- しびれ
- 初期対応の基本:何がしびれなのか
- 対応のコツ 1:感覚の障害をどう割り切るか
- 対応のコツ 2:頻度はどうか
- 対応のコツ 3:末梢神経の構造と障害の影響
- 末梢神経障害の振り分け
- けいれん
- 初期対応の基本
- 問診
- 診察のポイント
- 治療の基本
- ふるえ:パーキンソン病と類縁疾患
- 初期対応の基本:ふるえの 2 大疾患
- パーキンソン病の診断上の注意点
- 処方のポイント
- パーキンソン病の告知について
- 基本知識:パーキンソン病と類縁疾患
- 脳・脊髄血管障害脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血
- 診断
- 検査
- 一般的治療方針
- それぞれの治療(専門医への相談)
- 脳血管障害診断のミニマム
- 髄膜炎・脳炎
- 診断
- 検査
- 治療方針
- おもな原因疾患
- 痴呆(認知症)性疾患
- 診断
- 検査
- 治療方針
- おもな疾患
- 患者・家族との対応の原則
- ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)
- 診断:中枢性・末梢性の鑑別をする
- 診断:その他の情報を加える
- 3 分の 2 は自然回復する:どんな治療も有効?
- 圧迫性神経障害(圧迫性ニューロパチー)
- 脳血管障害との鑑別も重要
- 代表的な症状:手根管症候群は結構多い
- 脳脊髄外傷:取り扱いの手順
- 初期対応の基本
- 検査
パワーイラスト
- 症状のパターンと病巣
- 射中枢の覚え方
- 病的反射の検査法
- Barré徴候
- 神経解剖(1)―大脳・脳幹・小脳
- 神経解剖(2)-脊髄の断面と臨床症状
- 確実な腰椎穿刺法
EBM コラム
- 診断の絞りだしかた
- 検査前(事前)確率の高低と検査の結果の読みかた
- 尤度比を実感してみよう
- ブラックボックスである診断の過程を SHADE でまとめてみよう
- 失神は病歴と診察で 32%は診断がつく
- 鑑別診断の 3C
- EBM の実践は NBM 的に
- てんかんと EBM:実例を挙げて
- 抗血小板薬のインパクト
- 過剰な医療は共有地の悲劇かも知れない
- プロフェッショナルとしての社会的役割も重要である
- 治療開始をどうするか?
付 録
- 臨床上の疑問の解決法と文献の検索・選択のヒント
- EBMとは