本書は,時代に先駆けて,私たちの道である“作業療法” に先達としての役割を陰日向に,種をまき,育み導き下さった多くの先生方の思いやその最初期の戦闘の日々をも辿るものです.ご縁あって,リハビリテーションでは更地同様の日本に早々と作業療法を手探りで始められた先輩,同胞の皆様方にご登場いただき,最後に未来を担う若き勇士の諸氏にもご登場いただきました.(矢谷令子序文より一部抜粋)
一つの専門職がその国に育つというルーツを尋ね,日本の作業療法士協会発足前の時代背景,関わられ労してくださいました多くの先輩諸氏の過ぎた日々にお逢いしたいと願いました. 編集方針としましては,本の題名をひとまず「日本の作業療法発達史」とし,「発達」という言葉にこれまでに愛され育まれてきた作業療法らしさを込めて2 部構成とし,第一部を歴史を中心に,第二部を草創期からの作業療法実践の立場から,また,「これからの作業療法」として,将来の一端をみる立場から,執筆者のご協力をいただくことに致しました.「温故知新」を改めて考えながら,第一部,第二部を関連させ,作業療法士協会の「五十年史」と合わせて通読していただき,「日本の作業療法発達史―萌芽期の軌跡を尋ねて―」のタイトルの意図とともに,先人たちの息吹を感じ取っていただけましたらこの上ない喜びです.人類の曙があるように,専門職はどうやって生まれてきているのかを先人たちの文章から読み取っていただけることを願って止みません.(福田恵美子序文より一部抜粋)
矢谷 令子(やたにれいこ)
テネシー州とカリフォルニア州にて看護師の資格を取得,ロマ・リンダ大学作業療法学科卒業,ウェスタン・ミシガン大学大学院作業療法修士課程修了.ランチョ・ロス・アミゴス病院,国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院,札幌医科大学,国際医療福祉大学,新潟医療福祉大学などの教授を経て,(財)日本リハビリテーション振興会理事長を務めた.また,第二代日本作業療法士協会会長を務める.主な著書に「カード式在宅脳卒中のリハビリテーション」(医学書院),「作業療法概論(作業療法学全書 第1 巻)」(協同医書出版社),「作業療法実践の仕組み」(協同医書出版社)などがある.
福田 恵美子(ふくだえみこ)
国立療養所東京病院付属リハビリテーション学院卒(作業療法士の資格取得),放送大学教養学部にて学位取得.東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻(障害科学博士取得).栃木県身体障害医療福祉センター(現,とちぎリハビリテーションセンター),自治医科大学附属病院,国際医療福祉大学,山形県立保健医療大学,長野保健医療大学等で勤務.その後,NPO法人飛翔のもり,社会福祉法人共育会勤務(サービス管理者,相談支援専門員).
藤井 浩美(ふじいひろみ)
弘前大学医療技術短期大学部作業療法学科卒(作業療法の資格取得),学位授与機構にて学士取得.山形大学大学院医学系研究科(博士取得).黎明郷リハビリテーション病院(現・弘前脳卒中リハビリテーションセンター),弘前大学医療技術短期大学部などで勤務.現在は山形県立保健医療大学勤務,広島大学大学院医歯薬保健学研究科・客員教授.
[第一部]専門職としての軌跡
第Ⅰ章 作業療法の起源
- 1 作業療法の誕生
- 2 リハビリテーション−その真意性
第Ⅱ章 作業療法制度化への動き
- 1 作業療法制度化へ向けての動き
- 2 理学,作業療法士法令発布から養成校設立へ
- 3 作業療法教育の開始~卒業生の声々~
第Ⅲ章 作業療法士養成に関わる教育関連事項
- 1 作業療法教育体制とその変遷 ―カリキュラム構成を中心に―
- 2 切望された「四年制教育」—清瀬に残された記録より—
- 3 作業療法教育活動の数例
第Ⅳ章 日本作業療法士協会~発足からの四半世紀~
- 1 OT協会発足時の回想
- 2 協会組織体制づくりと諸活動
第Ⅴ章 大空に描く感謝
- 1 管轄官庁 厚生省の皆様
- 2 教育分野にご尽力いただきました先生方
- 3 ご支援,ご指導をいただいた皆様
おわりに
[第二部]臨床分野における実績
第Ⅰ章 身体障害
- 1 草創期
- 2 中枢神経
- 3 整形外科
- 4 高次脳機能障害
第Ⅱ章 精神障害
- 1 草創期
- 2 統合失調症,うつなどの精神障害
第Ⅲ章 小児発達
- 1 草創期
- 2 運動発達
- 3 知的発達遅滞領域
- 4 情緒・社会性能力遅滞領域
第Ⅳ章 高齢期関係
- 1 地域包括支援
- 2 高齢期関連の視点から
- 3 在宅ケアの視点から
- 4 生活機器とテクノエイドの視点から
第Ⅴ章 これからの作業療法
おわりに