本アトラスの第一部には総論が記載されており、炎症性腸疾患関連癌の現状と展望、診断、特徴、病理所見の概要が最新の結果を含めてわかりやすく解説されており、加えてその疾患の経過を遡って検討した臨床上、重要な資料も掲載されている。本アトラスの大きな特徴は第二部、第三部に多くの症例が掲載されているだけなく、個々の症例で内視鏡または消化管造影検査所見、切除標本の肉眼像、切除標本の全割による広範な領域での検討が揃って鮮明な画像で示されていることである。特に内視鏡所見は同一病変に対する種々の内視鏡検査所見が示され、切除標本の病理所見は切除標本の病変のmappingとともに免疫染色を含めた詳細な記載がされている。このことによって主病変の詳細な実態を十分知るとともに、炎症性腸疾患関連癌で重要な周囲病変を含めた病変全体の把握が可能となり、本症の診断や治療方針の決定に重要な情報が得られる。多くの読者の皆さんが本アトラスを参考にして炎症性腸疾患関連癌症例の的確な診断と適正な治療を行うことにより予後が改善されることを期待する。
- 第一部 炎症性腸疾患(IBD)関連癌―総論
- 1.炎症性腸疾患関連癌の現状と展望
- 2.炎症性腸疾患における腫瘍性病変の内視鏡診断
- 3.クローン病関連下部消化管癌
- 4.炎症性腸疾患関連癌の臨床病理学的特徴と病理診断
- 5.炎症性腸疾患関連癌の進展・経過
- 第二部 症例アトラス―潰瘍性大腸炎(UC)
- 早期癌 9症例
- 進行癌 12症例
- 第三部 症例アトラス―クローン病(CD) 20症例